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【昭和大学】オンライン授業と実習を融合 医療系大学でも進む教育のICT化

コロナ禍で加速する大学の教育改革 ―昭和大学保健医療学部で学ぶWithコロナ時代の「チーム医療」とは?

  • 大学・短期大学進学 2020年 12月18日

新型コロナウイルス感染拡大を受け、医療に携わる人材への注目度がますます高まっている。

少子高齢化も加速するなか、医療現場の人材育成は国家レベルの課題である。こうした背景を受け、全国の大学で看護系を中心とした医療系学部に注目が集まっている。

コロナ禍において、医療従事者を目指す高校生たちは、どのように進学先を選ぶべきか。

今回は、8つの附属病院を持つ医系総合大学である昭和大学を取材。ICT導入により進化する教育現場について、保健医療学部の下司映一学部長に話を伺った。

感染管理教育を徹底し、学内の学習環境と附属病院での実習を維持

―まず、昭和大学保健医療学部の特長について教えてください。

 昭和大学は、医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の4学部6学科を擁する「医系総合大学」です。私たちの強みは、4学部が連携して「チーム医療」を学ぶ実践的なカリキュラムを展開している点にあります。

 さらに、8つの附属病院で多彩な実習を受けられる、他大学では、なかなか実現できない環境をフル活用して、看護学科、理学療法学科、作業療法学科の3学科の学生たちは、将来の医療現場を実体験しながら学べるのが特長です。今回のコロナ禍においても、3学科はもとより他学部や附属病院と連携しながら、学生の安心・安全を確保した学びや実習の環境をしっかり提供できていると自負しています。

 

―新型コロナウイルス感染対策として具体的にどのような取り組みをしたのでしょう?

 本学部では、対面授業開始前に、学生自らが感染管理を行い主体的に学修できる環境を整えるために、感染管理教育を1年生から4年生の全学科の学生に体系的に行いました。

 手の洗い方から正しいマスクのつけ方や外し方、飛沫防止ガウンの脱着の仕方など、医療人として必須となる知識と技術の教育を繰り返し行いました。また、いち早く、学内PCRセンターを設置し、附属病院での病院実習の前は全員がPCR 検査を行い、安全性を担保しました。検査費用は大学の予算で賄い、PCR 検査の前には検査の目的を考えることにより、感染管理の重要性を再認識する機会としました。

 また、感染の疑いのある学生や職員、病院実習前の学生、さらに1年次の富士吉田キャンパス入寮前の全学生・職員の検査を実施しています。すでに検査数は2万件を超えています。さらに、手指消毒などの基本的な感染防止教育を徹底することで、院内感染などを発生させることなく、附属病院での実習を実施できています。

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―先ほど富士吉田キャンパスの話が出ました。今年(2020年)も全寮制の初年次教育を実施したのでしょうか?

 まず、富士吉田キャンパスでの初年次教育についてご説明します。これは、4学部の1年生全員を対象にした50年以上続く昭和大学の伝統的なプログラムで、全寮制の環境で学部の違う4名が同じ部屋で共同生活をしながら1年間学びます。

 今年は前期の実施を見送り、オンライン授業等で対応しましたが、入寮者全員のPCR検査を経て、9月から初年次全寮制教育をスタートしました。私はこの「全寮制」こそ、「チーム医療」の基盤になっていると考えます。医・歯・薬・保健医療の学生が同じ屋根の下で学ぶことで、互いの理解が深まります。

 これまでに行ったアンケートでも8割近くの卒業生が寮生活で培った「学部を超えた信頼関係」は、医療人をめざす基盤として有効だと回答しています。

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コロナ禍をきっかけに教育のICT化を加速する

―コロナ禍において、貴学も前期はオンライン授業を実施されました。対面授業が難しいなかで、どのように教育の質を担保したのでしょう?

 実は、オンライン教育の導入によりコロナ禍が教育改革のきっかけになりました。この機会に授業のオンライン化を加速するつもりです。大教室で行う授業をオンラインでそのまま再現することではありません。授業内の時間を細分化し、事前学習、グループディスカッションなどを組み合わせて、アクティブ・ラーニング形式、つまり双方向型の授業を展開しています。

 また、事前にオンデマンドの動画を視聴してもらい、授業の効率化も進めています。学生からの反応も良好で、オンライン教育への移行に手応えを感じています。もちろん、医療を学ぶ上で不可欠な演習や実習はICT 導入後においても対面で行います。時間割を工夫することで、通学の負荷や感染の危険性を軽減できると考えています。

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―オンライン授業に移行することで、カリキュラムや教育コンセプトに変更はあるのでしょうか?

 これまでの「積み上げ式」から「アウトカム基盤型」の教育への移行を目指しています。前者はいわゆるプロセス基盤型教育で、順を追って決められた内容を教えるもの。それに対し、後者は何を教えたかではなく、学ぶことで何ができるようになったか(パフォーマンス)に重点を置いた教育概念になります。

 卒業時に目指すべき医療人としての姿(ゴール)を設定し、そこに向けて何を身につけるべきか考えるような教育を目指しています。

 

―従来の対面型の実習や演習における昭和大学の強みを教えてください。

 1年次から4学部の学生が学部連携チームで行う実習ができるのも「医系総合大学」である昭和大学の特徴です。まず、1年次の「学部連携チーム医療PBL」では、各学部の学生が混合でチームをつくり、設定した課題に対して、それぞれの職種の立場から意見を出し合い、相手の立場を理解しながら解決方法を探っていきます。

 1年生が全員PCR検査後に入寮できたことで、今年も通常通りの学部連携実習が実施できます。こうして低学年から「チーム医療」の意識を高めたうえで、高学年になると同様の混合チームで、病棟や在宅での実習にも挑戦します。チームで現場を実体験することで、いま自分は何を学ぶべきかが明確になります。

 そして、自分の進むべき道が見えてきたら、8つの附属病院での実習を通して、先輩達の姿を見ながら自分の将来像をイメージすることができます。これも昭和大学で学ぶ大きなメリットです。

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―最後に受験生や保護者の皆さまにメッセージをお願いします。

 高まる医療系人材へのニーズもあり、保健医療学部の国家試験合格率や就職実績はいずれも好調です。国家試験対策や奨学金制度も充実しています。コロナ禍において、医療現場の仕事が大きくクローズアップされました。

 その影響で、強い意志を持って、医療従事者を目指す学生が増えるでしょう。医療現場に貢献したいという意気込みがあれば、理系科目が少々苦手でも大丈夫です。2021年度入学試験からは、全学部全学科で「国語」を選択できる受験方式となります。ぜひ「医系総合大学」の昭和大学で、医療人への第一歩を踏み出してください。

 

保健医療学部全学科で「国語」が選択できる受験方式がスタート
昭和大学保健医療学部では、2021年度入学試験から、一般選抜すべての入試区分において、「国語」を選択科目として採用する。これにより「外国語」「理科」の必須2教科に加え、「数学」「国語」から1教科を選択することになる。これは論理的思考力の適切な評価のために新たに採用したもので、医療現場での文章力やコミュニケーション力のニーズを反映していると考えていいだろう。「数学が苦手だが医療に携わりたい」という受験生にもチャンスが広がりそうだ。

 

sinro5_syouwa1.jpg 昭和大学 保健医療学部長
 下司映一 教授

 PROFILE
山梨県立韮崎高校・昭和大学医学部卒業後、昭和大学大学院で医学博士取得。専門は医療人教育と循環器内科。2015年から昭和大学 保健医療学部長。

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