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2年目を迎える、大学新入試制度のポイント

4つの新制度の入試をどのように活用するべきか?

  • 大学・短期大学進学 2021年 09月21日

2020年から制度が変わった大学入試。

大学入学共通テストの内容が直前で二転三転したことは記憶に新しい。私立大学入試も大きな影響を受けて慣れない新入試制度に苦労した受験生も多くいたことと思われる。

今回は改めてこれらの新入試制度のポイントを整理していく。

そもそも、何がどう変わったのか

 大学入試の方式は2019年まで「AO入試」「推薦入試」「センター試験」「一般入試」の4つに大別されていたが、2020年の入試から「総合型選抜」「学校推薦型選抜」「大学入学共通テスト」「一般選抜」に名称が変更になった。(下図参照)

 単に名称が変わっただけと考える方も多く存在すると思うが、実は内容も変化している。特に年内入試の「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」は従来の方式との差異があるため、内容を理解し対応方法を検討する必要がある。

 変化の実情を理解していただくために以下に内容を記載する。

 

■ 2020年からの大学入試新方式
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❶ 総合型選抜とは
今までAO入試と呼ばれた「やる気」と「熱意」を評価する入試。出願・合格発表が遅くなり、かつ今まであまり問われなかった「学力」を問う形式に変更になった点が大きな変更点である。

「やる気」や「熱意」を表現するために、志望校の大学案内や模擬授業の内容などを複数校にわたりしっかり調べる準備が必須となる。
 
❷ 学校推薦型選抜
従来の指定校制推薦入試と公募制推薦入試を指す。学校の評定平均値が基準となっており、高校における学習への取り組みを重視する入試制度。

指定校制は校内選考を突破する必要があり、公募制は基準クリア後に他校の生徒との勝負となる。合格発表が遅くなり、学力を問われる形に変化している。
 
  • 昨年は指定校制を活用する受験生が多かった様子である。
 
❸ 一般選抜
これまでの一般入試と同様に入試の得点が高い人が合格する形。英語の外部検定を採用した物や共通テストを併用したものなど大学で作成した試験以外を使用する入試も増加している。

また、志望理由等を記載させて提出させる大学も出てきている。入試改革に沿ってかなり思い切った変更をしている大学もある。
 
❹ 大学入学共通テスト
これまでのセンター試験に代わり実施された試験。英語の外部検定採用や国語・数学の記述式問題の導入などが延期となり、マークシート方式のみでの実施。

しかしながら英語の筆記・リスニング均等配点や理系科目の文章量増、図や資料グラフなどを読み込ませる問題など顕著な変更点が見られる。

 

 これらの4つの試験を俯瞰し、ポイントとなる点を述べてみる。

 

総合型選抜と学校推薦型選抜の合格発表が大幅に遅くなった

 新入試において総合型選抜の合格発表が11月1日以降と従来のAO入試が夏期休暇明けに多く発表されていたことに対して大幅に遅くなっていること、学校推薦型選抜も12月1日以降と1カ月遅くなったことは大きなポイントである。

 また、今まで推薦入試と一般入試を並行に考えていた受験生は、推薦の結果を見てから一般へという流れを作っていたが、(下図参照)推薦型選抜の合格発表から一般選抜の試験までの時間が少なく、途中からの進路変更が厳しいと言える。

 

■ 一般的な入試と発表の時期
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どの方式も学力を含めた総合力を必要とするものに変化している

 旧AO入試に象徴される年内入試は高等学校の活動実績を中心に評価されるのに対して、旧一般入試は学力検査のみで評価するという方向性の違いがあったのだが、新入試においては、互いに今まであまり必要とされなかった要素が加わることになり、ともに「学びの3要素」を求められるようになっている。

 よって、その分野に特化した能力よりも、総合力を重視される方向になったといえよう。

 

共通テストの扱いに関して

 共通テストの利用に関しては、英語の外部検定の代わりとなる、推薦型選抜の学力基準になるなど旧センター試験に比べて採用は拡大したように感じる。

 よって「共通テスト」=「一般選抜」という図式から、「共通テスト」=「大学選抜全般」という要素も出来つつあるため、年内受験組も含めて大学受験を希望する受験生は共通テストを受験することにより、選択肢が広がり有利になる可能性を秘めているといえるので出願をしておくことをおすすめしたい。

 

総合型・学校推薦型(公募)、一般選抜をすべて想定した受験準備は可能なのか

 実は総合型・学校推薦型選抜、一般選抜いずれの制度も「アドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)」に基づいて行われている選抜方法であることは意外と知られていない。

 年内の総合型・学校推薦型選抜が学力を問う入試に変化したことは、すなわち専門性の学力を確認する入試に変化したことを意味し、その専門性(例えば理科など)の学習は絶対的に必要であり、これは一般選抜の教科対策にも通じている。

 また、推薦系の入試においても、一般選抜においても英語の外部検定試験の重要度は年々増加しており、一般選抜において英語の大学独自試験を免除するなどの優遇措置が受けられる流れとなっている。

 たとえば、私大でよくある一般選抜の「英語外部試験利用2教科型」の場合、指定された英語検定の成績(スコア)を所持していれば英語の試験が免除となり実質、英語以外の1教科試験になるということだ。これならば、充分対応できる受験生もいるだろう。

 すなわち、総合型選抜などの推薦対策と一般対策の距離は縮まっており、「別物」ではなくなってきているのである。このことから、9月時点で両方に対応することを意識しておくだけで、一般選抜対策を行うことが可能となる。

 早めの情報収集で、自身の入試に対するプランニングを進めていくことがこの新入試制度の上手な活用法と言えよう。

 全般的暗記の脱却と行動力というコンセプトが目立つ入試改革である。よって、付焼刃的な進学・学習プランではなく、早期から方向性を決定していくことが重要であるといえよう。早め早めに自身の将来のビジョンを決めてそれに向けた準備を行うことで、自身の目標を達成できる可能性が高まることを念頭に進路を考えてほしい。

 

(進路企画 進路総合研究所所長 新沼正太)

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