コロナ禍でも自動車販売が好調でさらに整備士への期待が高まる
2020年5月に新体制での営業を開始した「トヨタモビリティ神奈川」を県下に展開する神奈川トヨタ自動車株式会社。
今回は昨年に引き続き2回目の取材となる。
コロナ禍での自動車業界の状況などを踏まえて、昨年はまだ計画段階だった専門学校生への奨学金制度のその後や、現在の社員採用や教育の方向性について、同社の人材開発部の3氏 原田氏・堀江氏・宮谷氏にお聞きした。
原田 コロナ禍の影響で公共交通機関を使うことへの抵抗感もあり、プライベートな移動手段である自動車に対する需要を感じています。おかげさまで販売は好調を維持しています。
特に当社で「プラネタリー・ショップ」と呼んでいる、ショッピングモールの広場などでおこなう展示販売がお客様からも好評で、営業スタッフのモチベーション向上にもつながっています。
このような状況の中、新卒採用も人数を減らすことなく、営業職で年30名、エンジニア職(整備士)で年70名という計画を立てています。
私たちにとって営業部門は「攻め」ですが、エンジニア部門は「守り」です。お客様に安心してクルマに乗り続けていただくために、エンジニア部門の強化がとても重要と考えています。
堀江 2020年5月に県下のトヨタ系販売会社4社が統合して現在の体制になりました。それによってエンジニアの人数も増えたので、まさにどのように教育を行っていくかが課題でした。
また、新入社員は学んできた過程が人によって異なります。そこでそれぞれに合わせた研修プログラムを新しく構築しました。
宮谷 本社・港北・藤沢・平塚の4か所にあるトレーニングセンターではピットも備えていて、現場さながらの実習を行うことができます。ここで高校新卒は半年間、自動車整備の専門学校の卒業者は3か月の研修を受けた後に各店舗へ配属となります。
特に高卒者はまだ社会に慣れていないこともあり、いきなり現場に出されては戸惑ってつらくなってしまうこともあるでしょう。そういったことにも考慮して研修期間を長くすることにしました。
エンジニアとして各店舗に配属後は、「トヨタ検定」という独自の制度でさらに技術の向上をめざしていきます。
原田 さらに会社としては、社員の心の部分を含めたサポートも心掛けています。その一環として、長く働くなかで社員の適性に応じたキャリアチェンジを行うこともあります。
例えばエンジニア職から営業職に変わるようなケースです。エンジニア経験者は長年の整備業務でクルマの構造を熟知していますから、お客様に的確なアドバイスをすることができるのです。
原田 はい。これは前回ご説明したとおり、高卒後に提携する自動車整備の専門学校に入学していただき、卒業後の当社への入社を条件に、入学手続き金に充当できる50万円の奨学金を給付する制度です。
この4月から初めての奨学生が各専門学校で学び始めています。
堀江 奨学生の採用試験には11名の高校生にチャレンジしていただき、そのうち6名が採用となりました。
現在はトヨタ東京自動車大学校・横浜テクノオート専門学校・神奈川総合大学校の3校と提携を行っている状況です。
宮谷 試験の内容は一次が適性検査(筆記)と面接、二次が役員面接です。面接は学ぶ意欲や働く意欲、健康面などを総合的に判断しています。
クルマが好きということはもちろん歓迎ですが、それと同じくらい学び続ける気持ちや、前向きに仕事に取り組む姿勢も重視しています。
原田 今後はさらに他の専門学校とも提携をしていきます。現在は二級自動車整備士を取得する2年制のコースのみを対象としていますが、一級課程などへの奨学金も計画しています。
また、日本学生支援機構の奨学金を利用して専門学校で学んできた方に対する返済時の支援なども考えています。
原田 就職活動ではしっかりと自己分析を行いやりたいことを見つけなさいと言われますが、まだ10代の高校生にとって自分は何者なのかなど、まだわからなくて当然です。
まずは、かっこいいな、ああいう風になりたいな、という憧れを持てるような職業人を身近に見つけるのがよいのではないでしょうか。
宮谷 昔はエンジニアといえばかっこいい職業の代表格だったのですが、今は社会が多様化して情報もあふれていますから、憧れるような職業はほかにもたくさんあるという時代だと思います。
クルマのエンジニアの現場は厳しいといわれることもありますが、整備することがお客様の命を守ることだという自負がありますから、その使命感がそのように感じられることがあるのかもしれませんね。
安全な車社会を守るためにエンジニアはなくてはならない大切な存在です。
原田 今日お話ししたとおり、専門学校からの入社と高校からの入社、どちらに対してもできるだけのサポートを考えています。
私たちと一緒に自動車を愛するお客様をサポートできる人をぜひお待ちしています。