女子栄養大学・女子栄養大学短期大学部は2026年度から共学化し、「日本栄養大学・日本栄養大学短期大学部」へ
戦前の1933年に設立された「家庭食養研究会」をルーツとする女子栄養大学・女子栄養大学短期大学部が、2026年度から「共学化」に踏み切る。
「食」への関心が高まるなか、男子の入学希望者が増えたことがその背景にあるという。同時に、大学名も「日本栄養大学・日本栄養大学短期大学部」に改称し、日本における栄養学の発信地としての存在感を示していく。
同学が目指す学びの未来像について、武見ゆかり副学長に伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
女子栄養大学・女子栄養大学短期大学部の源流にあたる「家庭食養研究会」の創立者である香川昇三と綾は、「食により人間の健康の維持・改善を図る」を建学の精神として掲げ、食と健康をテーマにした教育・研究に力を注いできました。
そして、本学は女子教育の場として発展していきます。というのもかつて、「栄養学は女子が担う」というイメージが強かったからです。その後、「食の外部化」の進展とともに栄養学はすべての人が関心を持つ学問になっていきます。
近年、本学への入学を希望する男子学生も増加するなか、性別の垣根を超え、すべての人に栄養学を柱とする学びの機会を提供することが必要と考え、2026年度からの共学化を決断しました。さらに、日本における栄養学の発信地であるという自負のもと「日本栄養大学・日本栄養大学短期大学部」への名称変更も同時に行うことになりました。
今後は、管理栄養士、栄養士、臨床検査技師、家庭科教諭、養護教諭など幅広い分野における専門人材の育成に励みながら、データサイエンス、フードウェルネスなど新たな学問領域へのアプローチも推進していきたいと考えています。
本学は日本国内でも珍しい「栄養学」を柱とする大学です。例えば、「人体」ならば医学、「食品」ならば農学という専門領域があります。しかし、「人体」と「食品」、さらに両者の「関係性」について総合的に学べるのは、栄養学しかありません。
日本栄養大学は1学部3学科2専攻という編成になっています。
まず、栄養学部実践栄養学科は、国家資格である管理栄養士を養成する学科です。
2025年度の管理栄養士の合格者数は206名。これは13年連続で全国1位の実績を誇ります。管理栄養士の資格取得がゴールではなく、「栄養のプロ」として社会で活躍することがねらいです。医療、福祉、スポーツなど5つのプロフェッショナル科目群があり、目指す将来像に合わせて、専門性を深めることができます。
次に栄養学部保健栄養学科には2つの専攻があります。
1つ目は栄養イノベーション専攻。栄養士の資格取得+αの学びに取り組める専攻です。フードウェルネスや栄養データサイエンスといった新たな「食」の学びを追究できます。また、この専攻では医療現場で検査を担う国家資格である「臨床検査技師」を目指すことも可能です。栄養学の専門知識を医療分野で役立てたい人に注目してもらいたいですね。
2つ目は保健養護専攻です。こちらは養護教諭を目指す学生のための専攻で、栄養学から看護学まで幅広く学び、多面的に子どもを支援できる力を養成しています。
栄養学部食文化栄養学科は、食文化や食産業について、自由度高く学べる学科です。
食育、食を通じた地域活動、レストラン運営、メニュー開発など幅広い学びに触れながら、新しい食の世界を創造する専門家を目指すことができます。
もうひとつ短期大学部食物栄養学科もあります。
こちらは2年で栄養士の資格を取得できるので、早く社会に出て働きたい人に向いています。専門的に学びたいテーマが見つかった場合は、短大から4年制大学への編入も可能です。
栄養学の知識をスポーツの分野で活かしたいという学生が増えています。この分野は男子学生からのニーズも高いと思います。実践栄養学科には、「スポーツ栄養」を専門的に学べるプロフェッショナル科目群があります。ここで、アスリートを支える管理栄養士を目指すことも可能です。専門的に学べば、スポーツ栄養の専門家である「公認スポーツ栄養士」の資格取得を目指すこともできるでしょう。
また、栄養学+データサイエンスを融合した教育は、社会からのニーズも高く、本学としても力を入れていきたい領域です。保健栄養学科の栄養イノベーション専攻には、「栄養データサイエンス領域」の科目群があり、プログラミングやビッグデータ活用、AI活用などを学ぶことができます。将来の就職を考える上でもこうしたスキルは大きな強みになるでしょう。
どんなに時代が変わっても人間が生きていく限り、「食」の重要性は変わりません。むしろ、健康寿命などが注目される今、栄養学の知識はますます重要になるでしょう。
栄養学の魅力は、さまざまな分野とつながりを持てる点です。「栄養学×スポーツ」、「栄養学×医療」、「栄養学×地域」、「栄養学×子ども」、「栄養学×高齢者」、「栄養学×AI」などテーマは無限に広がります。
大学4年間で栄養学を体系的に学び、できれば大学院まで専門的な学びを続けて、栄養のスペシャリストを目指してほしい。「食」に興味がある人なら、生涯役立つ知識を身につけられる場所がここにあります。
日本栄養大学
武見 ゆかり 副学長
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