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年内入試で「学力試験」が条件付きで可能に!2026年度入試はどう変わるか?

2025年度の私大一般選抜は6年ぶりの志願者増。大規模校に人気が集中。大学入試の二極化がますます進む?!

  • 大学・短期大学進学 2025年 08月07日

新課程での入試となった2025年度の私大一般選抜は、大規模校を中心に6年ぶりの志願者増と活況を呈した。
年内入試においては、東洋大学が学校推薦型選抜で学力試験のみの「学校推薦入試基礎学力テスト型」を新規導入し、約2万人の志願者を集めて大きな話題となった。

2026年度入試では、文部科学省が年内の学力試験の実施を「条件付きで」容認したことにより、新たに導入する大学が増えそうな状況だ。

本稿では、激動する首都圏私大入試の現状を分析し、今後の動向を予測していきたい。

(SINRO!編集長 河村卓朗)

大規模校を中心に大きく志願者数を伸ばした
2025年度私大一般選抜

大学入試を分析している豊島継男事務所の調査によると、私立大学の約9割にあたる540校の一般選抜志願者数の集計結果は前年度比106.6%で、20万1679人の増加となった。私大一般選抜の志願者増は6年ぶりで、大規模校ほど活況を呈したようだ。※豊島継男事務所調べ

下図「2025年度私大一般選抜(大学規模別の指数)」をみると、最も規模の大きい志願者3万人以上の大学群では、27校中、専修大学を除く26校が志願者増となり、前年度と比べた指数で108と大きく伸ばしている。

2025年度私大一般選抜(大学規模別の指数)

なかでも志願者が多い「早慶・MARCH・日東駒専」の志願者数(下表)をみると、特に増えているのは日本大学(121.6%)、中央大学(111.8%)、立教大学(111.2%)、東洋大学(110.5%)などだ。この表にはないが、他にも明治学院大学が3万485人の志願者を集め前年度比132.2%と大幅増となるなど、難関校に受験生が集まった状況がみてとれる。合格者数については詳細を調査中だが、前年度よりも減少傾向にあり、倍率が上がった大学が続出した可能性が高い。

2025年度一般選抜における 「早慶・MARCH・日東駒専」の志願者増減表

志願者2万9999〜1万人の大学群でも45校中33校が志願者増で、指数は110と2年連続で大幅な伸びを記録。大学規模別にみるとこのグループが最も伸び率が高かった。

このように志願者1万人以上の大学に人気が集まった要因としては、「18歳人口が増加したこと(約3万人)」、「新課程となった共通テストを警戒し、国公立受験組が難関私大にも広く出願したこと」、「2023年度・2024年度入試では収容定員8000人以上の大規模校の定員管理基準に経過措置が設けられ(それぞれ1.3倍、1.2倍)、合格者数を増やす大学が多かったこと」などが考えられる。

さらに、2025年度入試では共通テストに新たな教科として[情報]が加わったこともあり、[情報]を利用できる入試を新設した私大が多く、これも志願者増に一役買った模様だ。2026年度入試においても[情報]を使える入試は文系・理系を問わず拡大していくと予想され、志願者増の起爆剤となる可能性もある。

中小規模校は志願者5000人
未満の大学で苦戦が目立つ

続いて志願者1万人未満の大学群をみていくと、9999〜5000人の中規模校では指数が99.7でほぼ横ばいだ。また、5000人未満の小規模校でも4999〜1000人の大学群で指数100.1と微増で、ともに前年度までの減少傾向に歯止めがかかった感がある。

ただし、4999〜1000人の大学群では志願者が増えた大学より減った大学の方が多いのが気になるところだ。1000人未満の大学群では集計数の約3分の2にあたる209校が志願者減で、前年度までに引き続き厳しい結果になった。

2025年度私大一般選抜(大学規模別の指数)

中小規模校に関しては年内入試へのシフトが年々進み、一般選抜まで残っている受験生が減った影響で志願者減となっている可能性が高い。一般選抜においては、志願者数1万人以上の規模の大学と1万人未満の規模の大学で二極化していくといえそうだ。

年内入試では総合型選抜の志願者が年々増え、
入試内容の多様化が進む

次に、年内入試とよばれる総合型選抜、学校推薦型選抜(公募制)の状況をみていきたい。まず総合型選抜だが、豊島継男事務所が全国の私立大学344校の総合型選抜入試結果を集計したデータによると、2025年度の総志願者数は15万8061人で前年度よりも2万297人増(前年度比指数114.7)となり、高い人気が続いている。

東京エリアでは8032人増えて指数115.1、中小規模校が多い南関東エリア(千葉・埼玉・神奈川)は4985人増えて指数125.7とさらに伸び率が高くなっている。学校推薦型選抜(公募制)も、東洋大学が学力試験のみの選考を実施し2万人近い志願者を集めた影響などもあり、志願者数が増えている。

エリア別 総合型選抜志願者数

ここからは、最近話題となることが多い年内入試における学力試験について解説していきたい。

首都圏の中堅私立大学の総合型選抜の選考方法は面接や書類審査が主流だが、近年は学力検査型の入試を行う大学が少しずつ増えている。前年度までに学力型の総合型選抜を実施した大学としては、桜美林大学、関東学院大学、共立女子大学、千葉商科大学、麗澤大学などが挙げられる(弊社編集部調べ)。

学校推薦型選抜においては2025年度入試で東洋大学が「学校推薦入試基礎学力テスト型」を、大東文化大学が「公募制 基礎学力テスト型」を導入したことが記憶に新しい。2026年度入試では、「学力テスト型」の入試を年内から導入する大学がさらに増えそうだ。順を追ってその根拠をお話ししていきたい。

文部科学省が条件付きで年内の学力試験実施を容認!?

本稿執筆直前の6月3日、文部科学省が2026年度の大学入学者選抜実施要項を公表した。

大きなポイントは、これまで認めていなかった学力試験による選考の年内実施について、「小論文・面接・実技検査等の活用」または「志願者本人が記載する資料や高等学校に記載を求める資料等の活用」のいずれかを組み合わせれば可能としたことだが、この話には伏線がある。

ことの起こりは2025年度入試で東洋大学が学力試験のみの入試を関東の総合大学として初めて年内に導入し、多くの志願者を集めたことにある。これが大きな話題となり、学力試験のみの入試を年内に行う是非がクローズアップされたのだ。

結果として文部科学省が「条件つきで実施を認める」形となったため、他大学でも次年度以降、年内の学力試験を中心とした入試の導入が大きく増えていくだろう。

2026年度入試で年内に学力試験を中心とした
選考を実施する首都圏の私大は…

2026年度入試で年内に学力試験を中心とした選考の新規導入を予定しているのは、東洋大学(総合型選抜 基礎学力テスト型)や神奈川大学(総合型選抜 適性検査型)、大妻女子大学(総合型選抜 基礎能力型)、白百合女子大学(自己推薦入試Ⅰ期 基礎学力方式)、和洋女子大学(総合型選抜 併願制)、昭和女子大学(公募制推薦入試 基礎学力テスト型)、関東学院大学(給費生選抜)、明星大学(スカラシップ選抜)などだ。※6月13日現在の弊社編集部調べ。大学WEBサイト等で調査

東洋大学は、2025年度入試では学校長の推薦書と学力試験のみだった選考を、2026年度入試では総合型選抜で実施する。これにより推薦書は不要、学力試験200点、調査書10点、事前課題10点の220点満点という内容になる予定だ。さらに、試験会場も全国に20か所設置するという。2025年度入試では高校から推薦書を発行してもらえず出願できなかった受験生もいたようだが、推薦書が不要になることで前年度以上に志願者を集めるのではないかとみている。

2026年度入試で年内に併願可能な学力検査型の入試を新たに実施予定の首都圏私立大学

年内に学力試験を中心とした入試を実施する他の大学についても調査したところ、文部科学省の意向に沿う形で学力試験に書類(調査書や志望理由書、事前課題など)、または面接などを加えた形での選考を予定していることがわかった。2027年度以降はこうした動きがさらに加速しそうだ。

年内の学力試験を上手に活用すれば
一般選抜との併願もできる?!

このように、年内から学力試験を中心とした入試が増えることで一般選抜にどのような影響が出るだろうか。年内に学力試験を中心とした入試を行う大学は、大半が入学手続き締切日(二次締切または最終締切)を1月下旬、あるいは2月下旬に設定している。

各校の入試スケジュールを見ると、神奈川大学(総合型選抜 適性検査型)の二次手続き締切日は1月27日、大妻女子大学(総合型選抜 基礎能力型)の二次手続き納入期間は2月18日〜20日、明星大学(スカラシップ選抜)の一般選抜免除合格者の最終入学手続き締切日は2月20日、東洋大学(総合型選抜 基礎学力テスト型)の二次手続き締切日は2月27日などとなっている。

つまり、これらの入試を受ければ年内から学力試験を経験できるうえ、首尾よく合格を得られれば、進学先を1つ確保した状態で本命大学の一般選抜に臨めるわけで、受験生にとってメリットが大きい。

なお、東洋大学では2025年度入試の「学校推薦入試基礎学力テスト型」で1万9610人の志願者を集め、合格者は4194人、入学者は906人だったという。

年内の学力試験利用者増で
一般選抜での学生募集に苦戦する大学が増える?!

2025年度入試で年内に東洋大学に合格した受験生の多くは、一般選抜では東洋大学と同程度または難易度の低い大学を受けなかったことが想像される。

今後、年内に学力試験を実施する大学が増えれば早々に進学先を確保する受験生が増えるため、実施校と難易度が同程度の未実施校では一般選抜の志願者が減る可能性がある。

また、年内の学力試験である程度の入学者を確保できれば、年明けに実施する一般選抜の募集枠を減らす大学も出てくるだろう。そうでなくても総合型選抜の志願者数は増加の一途をたどっており、また難関大学でも指定校推薦の利用者増、系列校や教育提携校からの推薦入学者の増加なども考えられる。

そうなると、一般選抜の募集枠を縮小する大学が増えてくる可能性が高まりそうだ。

2026年度私大入試では
進路選択の早期化がさらに進むと予測

こうした状況を踏まえて2026年度私大入試を予測すると、学力試験を中心とした入試の年内実施が「公式に解禁される」元年となるだろう。

総合大学でも導入する大学が出てきており、一般選抜で難関校を志望する学力の高い受験生にとっては、年内から学力試験を中心とした入試を「本命校の押さえ」や「本番に向け試験経験を積む場」として受けられる環境になりつつある。

年内入試については中小規模校を中心に年々総合型選抜の募集人員を増やし、併願を認める入試を実施するなど「受けやすい」入試の導入が進んでいる。中堅層の受験生の中には指定校推薦と併せて検討する人がますます増えていきそうだ。

2026年度は私大入試において、年内からの学力試験の実施が条件付きで解禁されたことで年内入試にも「学力型」を打ち出しやすくなる、大きなシフトチェンジの年となるだろう。

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