4学部6学科7専攻の新体制でチーム医療教育のさらなる拡充へ
医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部を擁する医系総合大学として、他職種と連携しながら活躍できる人材を輩出してきた昭和医科大学。
2027年4月には鷺沼キャンパスの新設、さらに新学科・専攻の設置を予定するなど、チーム医療教育の強化に向けた改革を進めている。
今回は保健医療学部長の鈴木久義教授に、新たな取り組みのねらいや医療人に求められる資質をうかがった。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
昭和医科大学の最大の特徴は、1年次に全学部共通で実施している富士吉田キャンパスでの全寮制教育です。医学部・歯学部・薬学部と保健医療学部の学生が同じ部屋で生活を共にして学ぶことで、幅広い視野に触れながら医療人としての基礎を固めることができます。
また、4年間にわたる本格的なチーム医療教育を経験したのち、本学の附属病院で臨床実習に取り組める点も大きな魅力です。実習先となる附属病院には各学部の臨床教員を配置しており、本学内でも指導を担当。医学部や歯学部だけではなく全学部・学科で、現職の医療従事者が学生を教える体制が整っています。
これにより、学生は実習前の準備から実習中、さらには実習後の振り返りまで、一貫した指導を受けることができます。日頃の授業から学生の性格や人柄を把握したうえで実習先での指導を行える点についても、他にはない本学ならではの強みだと考えています。
これまで、保健医療学部だけが他学部と別の環境で学んでいる状況が続いていました。しかし、鷺沼キャンパスの新設によって、医学部・歯学部・薬学部・保健医療学部の学生約2000人が一堂に会して学ぶことになります。
新キャンパスは最寄り駅から徒歩2〜3分という好立地。また、附属病院へのアクセスも良くなり、より実習が行いやすくなるというメリットも期待しています。
実習室や講義室については、学部の枠を越えて使用できるようなコンセプトを打ち立てています。医療現場の課題が複雑化する近年、各分野の知見を集約したチーム医療の重要性はますます高まりつつあります。
そこで、他学部の学生が何を学んでいるのかを知り、学部間の交流を育む“風通しの良い環境”を実現するべく準備を進めています。本学のアイデンティティである富士吉田キャンパスでの全寮制教育に続き、異なる学部の学生同士が同じ環境で絆を深めた経験は、将来的にチーム医療に取り組む際にも活かされるでしょう。

新キャンパスが誕生する2027年4月より、リハビリテーション学科に「言語聴覚療法学専攻※」と「視覚機能療法学専攻※」が加わります。
また、保健医療学部に「医療技術学科※」を新設し、その中に「診療放射線技術学専攻※」「臨床工学専攻※」「歯科衛生学専攻※」を設ける予定です。
※現在設置構想中であり、今後変更される可能性があります。
この改革には、医療業界におけるエッセンシャルワーカーを養成したいという本学の思いが色濃く反映されています。特に意識しているのは、将来的に各専門領域で指導者となりうる人材を育成することです。少人数教育を徹底し、次世代へとバトンをつないでいくことのできる医療専門職を輩出したいと考えています。

既存の理学療法学専攻と作業療法学専攻において、両専攻の学生が合同で学ぶ機会を増やしています。理学療法士と作業療法士は専門性が異なりますが、リハビリテーションの本質は共有しています。別の立場から同じ患者さんと向き合うこともあるため、本学で互いの専門性を理解しながら学ぶことには大きな意義があると感じています。
新専攻の設置に伴って授業科目の見直しも行っており、各分野の学生が専門性を自覚するとともに、他分野にも関心を向けられるようなカリキュラムを検討しているところです。
専門分野に関わる知識やスキルはもちろんのこと、医療従事者には高い倫理観と責任感が求められます。患者さんを中心に物事を考え、誠実に向き合って治療やケアを提供していく。それに喜びを感じられることこそが、医療従事者にとってのプロフェッショナリズムです。
少子化に伴い、他人のために尽くす仕事に魅力を感じられる人の数は相対的に減っているのかもしれません。それでも、人が生きていく限り、医療分野の仕事は不可欠です。
本学としても強い責任感を持った受験生を迎え入れると同時に、入学後も倫理観を養成するような教育に力を入れたいと考えています。
医療業界で働くことを目指す受験生の皆さんには、課外活動などを通じて他者と協力する経験を積んでほしいと思います。
自分の力だけでは何も解決できないのが医療の世界です。本学の学生たちも、学部合同の授業や実習のなかで、互いの専門性を尊重しながら協力する姿勢を育んでいます。
チーム医療においてはすべての職種の連携が重要であり、そこに優劣は存在しません。自分の役割を正確に把握し、他の専門職の立場も理解できる医療従事者を目指すうえで、高校時代に他者と何かを成し遂げた思い出が“一生の糧”になってくれると思います。
昭和医科大学 保健医療学部長
鈴木 久義 教授
⇒『進路の広場』で昭和医科大学を見る