総合大学の強みと企業・自治体との連携を活かした新しい情報学とは?
2026年4月、文系・理系の計11学部を擁する関東学院大学に、「情報学部」が新たに誕生する。
キーワードは、「融合する情報学」。総合大学の強みを活かして、情報技術の専門性と他分野の知識を結びつけた学びを展開していく。
大学全体で取り組む「社会連携教育」を通じて、どのようなエンジニア人材を育成していくのか。情報学部長に就任予定の元木誠教授に話を伺った。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)
総合大学である関東学院大学において、情報教育の重要性が増していることから、情報学部を新設することになりました。
もともと高校の「情報I」必履修化に合わせて、2025年度入学者に向けて、大学全体で8科目の情報教育系科目を新設しました。これらは全学共通科目として、全学部の学生が履修できます。
情報学部は、これらの情報教育の中核を担う組織と位置づけられます。また、他学部の学生が情報学を学べる副専攻制度も整備されており、分野横断的な学びが可能になります。副専攻制度を利用することで、情報学部の学生も経済学部や社会学部など他学部の科目を履修可能で、最大20単位まで卒業単位として認定されます。

キーワードは、「融合する情報学」です。総合大学の情報学部として、多様なエンジニア(技術者)を育成していきます。
学部の特色としては、全学で取り組む「社会連携教育」が挙げられます。本学では、すでに前身となる理工学部の情報系コースの時代から、多くの企業・団体と連携した教育を展開してきました。具体的には、近隣の三井アウトレットパークや八景島シーパラダイスと連携したPBL(課題解決型)科目などがわかりやすいでしょう。
八景島シーパラダイスでは、視覚障害者でも展示物がわかる音声システムの開発などに取り組んでいます。そのほか、企業による寄付講座も開講します。日本IBMによる「企業ITシステム概論」、日本数学検定協会の「ビジネス数学入門」などいずれも実践的な内容になる予定です。
企業や自治体との共同研究も進んでいます。これは私の研究室の事例なのですが、横須賀市、横須賀海上保安部、県立海洋科学高校と共同で、ドローンとAI(人工知能)を使った次世代型密漁対策の実証実験を行いました。これは沿岸部におけるアワビやサザエなどの密漁を対象にしたもので、今年(2025年)8月に行った実験では、密漁者を発見するシミュレーションを行い、テレビ番組でも取り上げられました。
こうした社会連携教育によって、学生は実際の社会課題と向き合い、学んだ知識を実践する豊富な機会を得ることができます。
情報学部には情報工学コース、数理・人工知能コース、情報メディアコース、医療・人間情報学コースの4コースが設置され、それぞれ異なる未来像を描くことができます。
情報工学コースはITエンジニア全般、数理・人工知能コースはAIエンジニアや組み込みエンジニア、情報メディアコースはWEBデザイナーなどクリエイティブな技術者、医療・人間情報学コースは医療データ処理やデジタルヘルスケアのエキスパートの育成を目指します。
また、履修モデルとして、自分のコースで深く学ぶ「スペシャリスト」、情報学を広く学ぶ「ゼネラリスト」、他学部の副専攻も学ぶ「多面的視点」の3パターンが用意されており、学生が自分の興味や目標に合わせて科目を選択できる柔軟性があります。特に「多面的視点」モデルでは、総合大学の強みを活かした分野横断的な学びが可能です。

入試は情報学部情報学科として一括で行われ、所属コースは合格後のコース選択ガイダンスを通じて、学生が自分に合ったコースを選ぶ仕組みになっています。また、学期ごとにコース変更も可能です。コースごとの定員は設けておらず、学生の希望に応じて自由に選択できます。
一般選抜の科目は、「英語」+「国語または数学」から選択可能で、文系の学生も受験しやすくなっています。数学に不安がある受験生には、入学後の学習サポートも充実しているので、安心してチャレンジしていただきたいです。
情報学を学ぶ上では、やはり数学と英語の基礎が重要になります。AI・データサイエンスの基盤は数学であり、プログラミングの基盤となる共通言語は英語です。必ず役に立つので、苦手意識を持たずに触れるようにしてください。
情報学の知識や技術は文系・理系を問わず幅広い業界で求められています。そのため、総合大学の関東学院大学情報学部だからこそ可能な「分野横断的な学び」が大きな価値になるでしょう。
また、AI・データサイエンスの急速な発展を楽しむ意識も重要です。大学卒業後も常に知識をアップデートしていくための「情報技術の学び方」をここで身につけてほしいと思います。
関東学院大学 情報学部 学部長予定者
元木 誠 教授
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