“挑戦したもの勝ち”の出題は2026年度共通テストでも継続か?
「2025年度 大学入学共通テスト」から新たな出題科目として追加された「情報Ⅰ」。
今年の2月に大学入試センターが発表した実施結果を見ると、初年度の今回は他の科目と比較して平均点が高かったことがわかる。
これを受け、大学入試のスペシャリストである弊社 進路支援総合研究所 新沼正太所長が、2025年度の「情報Ⅰ」の振り返りと2026年度に向けた予想をしてみた。
(進路企画 進路支援総合研究所所長 新沼正太)
2025年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)全体を振り返ると、志願者数・受験者数はともに前年度からの微増にて推移しました。これは現役生の人数からすれば妥当な数字であり、おおむね予想されていた通りの結果であったといえるでしょう。

そして、新たに追加された「情報Ⅰ」は、“挑戦したもの勝ち”の科目だったと考えています。共通テストは基本的に、平均点が60点に近づくように設定されています。それに対し、「情報Ⅰ」は平均点が69.26点と、他の科目と比較しても大幅に高くなりました。理系で平均点の低かった化学や地学と比較すると、20点以上の差が開いています。

私立大学の共通テスト利用型入試では特に科目が指定されていない場合もあるので、この差は非常に大きいですよね。新しい取り組みということでやや易しい設問になったと考えられますが、対策さえしていれば明らかに得点しやすい試験だったと総括することができます。
この実施結果から、次回、2026年度の「情報Ⅰ」には、平均点を60点に下げるための調整が入ると予想できます。共通テストでは試験の難易度を高める際、「問題を解きにくくする」か「時間によって制約する」という2つの調整を行うことが一般的です。
ただ、「情報Ⅰ」において問題を難しく解きにくくする場合、どうしても数学的な要素を増やすことになってしまいます。それでは「数学」と「情報」を分けて能力を測っている意味が薄れてしまうので、問題に対する情報処理の量を増やし、時間内に終わらせることを難しくする方向性になるだろうと予測しています。
これらを踏まえてやや難化すると予想される2026年度の「情報Ⅰ」ですが、引き続き“挑戦したもの勝ち”の状況には変わりがないと考えています。学習指導要領に大きな変化はなく、対策するパターンの量も限られているので、基本的な条件は2025年度と同じです。
当然ながら過去問も1年分しかありませんし、それを参考にした模擬試験にもほとんど違いはないでしょう。つまり、勉強に用いるツールで差が生まれるような状況ではないということです。
そして条件が一緒であるということは、出題範囲内での経験値がそのまま得点に反映されるということになります。これが数学の場合であれば、出題範囲の対策をしていても、実際の試験に応じて「学んだことを使いこなせるか」という要素が入ってきます。しかし先ほどお伝えした通り、「情報Ⅰ」で複雑な計算が出る可能性は低く、単純な知識と情報処理能力が問われることになる。
勉強に同じ時間をかけるのであれば、結果を出しやすいのはおそらく「情報Ⅰ」だと考えています。
「情報」という言葉は非常に抽象的で、初年度はどこまで対策をすればいいのかが見えにくい状況でした。実際、試験日を迎えるまでは受験生や教員、塾講師から不安の声が聞こえていました。しかし、いざ試験が終わると、「情報Ⅰ」に関する話題が急激に減ったのです。闇雲に立ち向かっていた相手の正体が見えたことで、安心して選択できる科目であることがわかったからですね。
その点、出題の傾向が見えていることは、2026年度の受験生にとって大きなアドバンテージになるでしょう。
一方で、2026年度の共通テストで「情報Ⅰ」を選択する受験生が増加するかどうかは予想できない部分があります。というのも、前回の試験を受けて「情報Ⅰ」が“挑戦したもの勝ち”だと理解し、受験生の背中を押す教員がいるかどうかが高校によって異なるからです。
そもそも「情報」だけを専門に教えている教員がいない高校もあり、主要3科目(国語・数学・英語)以外の受験対策に力を入れていないという事例も見受けられます。そうした環境では、わざわざ「情報Ⅰ」を受験してみようという考えが浮かびづらい。教員が充実している高校では「情報Ⅰ」の利用者が増え、それ以外の高校では難化を恐れてむしろ減ってしまうという“二極化”が進む可能性もあります。
実は、こうした“二極化”は、共通テスト全体でも起こっています。「情報Ⅰ」を含め、各教科の基本が問われる共通テストは、明確な対策があるようでない試験だといえます。最大の対策は、高校の授業に自ら考えて取り組むことに尽きるでしょう。
そして、論述試験のある国公立大学を目指して各科目を深く理解している受験生は、特に対策をしなくても共通テストで得点することができます。その結果、暗記中心の「共通テスト対策」のみに力を注いでいる受験生と比較して高い得点率を維持することができるのです。
これは2026年度の「情報Ⅰ」についても同様です。私の予想では、平均点を下げるために、問題の処理スピードが求められるような調整が入ると考えられます。しかし、科目の根本的な理解ができていれば、引き続き有利な科目であることは間違いありません。
また「情報Ⅰ」に限らず、各科目の基本的な内容が身についている高校生は進路選択の幅が広がりますし、大学での学びにも必ず活かせます。データサイエンスなど情報を活用する分野で活躍したい方はもちろん、幅広い受験生が安心して「情報Ⅰ」に挑戦してもらえるといいと思います。