文部科学省により、年内に学力試験を中心とした入試を実施することが容認された2026年度入試はこれまでにない展開となりそうだ。
受験者が増えるばかりの年内入試に学力型も加わりさらなるヒートアップが確実視されるなか、一般選抜では難関校人気が続き厳しい入試となるのか?
大きなゲームチェンジを迎える2026年私大入試を予測する。
(SINRO!編集長 河村卓朗)
2025年度私大入試は6年ぶりの大幅志願者増であったことは前号でも触れた。
規模の大小に関わらず軒並み前年比増となり、日本私立学校振興・共済事業団がまとめた「令和7年度私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、2025年度の学生募集で定員割れを起こした大学は316校(53.2%)となり、前年度から38校減少し6%ほど改善された。定員割れ大学の総数が減ったのは5年ぶりとなる。
2026年度入試においても18歳人口は3万人ほど増えた前年度と同数ないし微増となる見込みなので、引き続き私大にとっては学生を集めやすい状況といえる。

次に、本誌がターゲットとする首都圏私大の志願倍率について調べてみると
となっている。(日本私立学校振興・共済事業団「令和7年度私立大学・短期大学等入学志願動向」より)
個別大学でみると、難関大学がこの倍率アップを牽引していることがわかる。前号で触れたとおり、志願者数が3万人以上の大学は27校中1校を除いて軒並み志願者増となった。なかでも、2025年度入試で前年度比0.5ポイント以上倍率が上がった難関校を下図にまとめた。

早稲田大学だけでなく、MARCHやそれに次ぐ難易度の大学でも志願者が増えて合格者が減り、倍率が上昇したことが読み取れる。表外の難関校に関しても、前年度よりも合格者を減らし倍率が上がった大学が多く、難関私立大学を目指す受験生にとって非常に厳しい入試となった。
前年度(2025年度)入試から、収容定員8000人以上の大規模私大は収容定員の1.1倍を下回る定員管理が求められるようになった。
経過措置期間中は1.3倍(2023年度)、1.2倍(2024年度)だったので合格者を比較的多く出していたが、2025年度は大きく絞り込む大学が多かった。そのため、近年沈静化していた「3月に入ってからの追加合格による定員数調整」を復活させる大学が増えたようである。
本誌調査では、2025年度一般選抜では早稲田大学が512人、慶應義塾大学が940人、上智大学が1397人、それぞれ追加(補欠)合格者を出していた。その他の大学は公表データが見つからなかったが、一定数の追加(補欠)合格を出している可能性が高い。
2026年度入試における大規模人気校の収容定員管理の施策について予想すると、管理基準が甘かった3年前、2年前に多めに入学させた分の調整も必要となるので、前年度以上に合格者数を絞り込む大学が出てくるだろう。2026年度一般選抜で難関私大を受ける人は、場合によっては長期戦となることも覚悟しておいたほうがいい。
ここからは私大入試の全体像について解説していきたい。
データで俯瞰してみると、近年の私立大学の入学者構成には大きな変化が起きている。文部科学省の「国公私立大学入学者選抜実施状況」によると、一般選抜による入学者は2021年度の42.0%から2024年度は39.7%と減少。一方で総合型選抜は14.9%から19.3%へと3年で4.4%も上昇しているのだ。
この変化を具体的な人数でみると、総合型選抜での入学者は2021年度の7万1292人から2024年度の9万928人と約2万人も増加している。
この間、中堅校や小規模校では総合型選抜の募集人員や入試回数を増やす、併願を認める入試を新設または増やすなど、あらゆる方策で受験生に「受けやすい」入試の実施を模索してきた。こうした努力も総合型選抜での入学者増に大きく寄与している。
さらに、2026年度入試では条件つきではあるが年内入試で学力検査型の入試も可能となった。おさらいのために新ルールのポイントを記す。
これにより、本来一般選抜を検討していた受験生や評定平均に不安がある受験生にも年内合格への道が開かれた。昨年度話題となった東洋大学の学校推薦型選抜「学校推薦入試基礎学力テスト型」のような学力重視の年内入試が、2026年度は大幅に拡大しそうである。
昨年度時点ですでに年内に学力試験を中心とした入試を実施している大学は複数あったが、やはり2026年度に一気に総合大学の参入が増えていくことは間違いない。
本誌の調査では、2026年度入試で年内に学力試験を中心とした入試を実施する総合大学は、東洋大学(総合型選抜基礎学力テスト型)、大東文化大学(総合型選抜 基礎学力テスト型)、拓殖大学(総合型選抜Ⅰ期基礎力評価方式)、玉川大学(公募制推薦入学試験適性検査方式)、立正大学(学校推薦型選抜基礎学力テスト型)、明星大学(スカラシップ選抜)、神奈川大学(総合型選抜適性検査型、給費生試験)、関東学院大学(給費生選抜)などだ。
なかでも東洋大学の基礎学力テスト型と神奈川大学の給費生試験は、MARCH志望者等にとって年内に力試しができる機会となるだろう。
また、女子大でも大妻女子大学、白百合女子大学、昭和女子大学、和洋女子大学などが年内に学力試験を中心とした入試を実施予定だ。
これだけの大学が年内に学力試験を中心とした入試を実施すれば、一定以上の学力があり、一般選抜の受験を想定していた受験生の中で「年内に確実に1校以上合格を確保し、2月は本命校に集中したい」、「年内に学力試験を体験しておきたい」などの思惑から出願を検討する人が増えるはずだ。
最終(二次)入学手続締切日を2月後半に設定している大学が多く、一般選抜で難関校を狙う受験生にとっては非常に使い勝手がよい点も大きなポイントだ。
本誌が発行される2025年11月は、まさに年内の学力試験が実施される時期だ。各校に一体どのくらいの志願者が集まるのか?!大いに注目したい。
一方で、一般選抜は、もはや「年内入試の募集枠が少ない難関国公立・私立大学受験者のための入試」になっているといっても過言ではないだろう。
以下に、2026年度入試における年内入試受験層と一般選抜受験層を大まかにまとめる。
右記の2層が大半となりつつ、系列校への内部進学や高大連携協定校などの枠を活用する層も存在する。
加えて、左記の層が拡大することになる。
この層のうち1校以上の合格を確保するために年内入試を受けた受験生は、一般選抜では年内に合格を得た大学と同レベルの大学群は受けず、第一志望校群の複数の大学に手厚く出願するはずだ。そのため、一定以上の難関私大では引き続きハイレベルな競争が続く可能性が高いといえるだろう。
逆に、年内に学力試験を中心とした入試を実施する大学と同程度の偏差値帯の大学は、この煽りを受けて一般選抜では志願者減となるかもしれない。
私大一般選抜とも関わりが深い大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の受験者数の推移を調査すると、興味深いことがわかった。私大一般選抜における「共通テスト利用入試」の主力は3科目型、あるいは2科目型だが、共通テストの科目数別の受験者数をみると、1–3科目受験者(私大志向層)の減少が目につく。
2025年度は新課程入試だったので比較が難しい面もあるが、旧課程の2023年度から新課程の2025年度まで3年連続で減少が続いており、私大の共通テスト利用入試を検討していた層が離脱している可能性が高い。また、4〜6科目受験者に関しても、2021年度から2024年度でみると減少傾向だ。
一方で、国公立大学受験の王道ともいえる7科目以上(2025年度は情報Ⅰが加わり8科目以上で算出)の受験者数はこの5年間安定している。

ここで忘れてはいけないのは、私立大学の8割以上が一般選抜で共通テスト利用入試を導入していることだ。私大受験者は、ライバルが減り続けている今こそ共通テストをしっかり受験しておいてほしい。
ここまでの解説をまとめると、2026年度私大入試に関して
という状況がみえてくる。これらの要素を加味しながら、最後に難関私大を目指す受験生層にむけて次のような施策を提案する。
2026年度入試は年内学力試験の本格導入により、戦略次第で合格の可能性を大きく広げられそうだ。年内に1校確保し、共通テストをしっかり受験し、一般選抜では本命校に全力を注ぐ。この3段階の戦略で、納得のいく進路選択を実現してほしい。