絵本やアニメ、ぬいぐるみなどに熱中するのは、子どもだけではありません。最近は大人を魅了する絵本やぬいぐるみのキャラクターも多数存在します。
白百合女子大学人間総合学部には、「絵本」「児童文学」「ぬいぐるみ」などを専門的に学べる「児童文化学科」があります。
このユニークな学科にはどんな学生が集まり、授業ではどんな学びが展開されているのでしょう? 同学科の在学生3名に話を聞きました。
聞き手・構成 河村卓朗(SINRO!編集長)

絵本やアニメ、ぬいぐるみなどに熱中するのは、子どもだけではありません。最近は大人を魅了する絵本やぬいぐるみのキャラクターも多数存在します。
白百合女子大学人間総合学部には、「絵本」「児童文学」「ぬいぐるみ」などを専門的に学べる「児童文化学科」があります。
このユニークな学科にはどんな学生が集まり、授業ではどんな学びが展開されているのでしょう? 同学科の在学生3名に話を聞きました。
安藤 私は小さい頃からディズニー映画が好きで、よく観ていました。高校生の頃は、ディズニー作品と原作の違いが気になっていました。また、『アイカツ!』や『プリパラ』など日本の少女アニメも好きで、その気持ちは変わりませんでした。
進路に迷っていたころ、家の本棚にあった昔話集や童話集を読み、児童文学を専門的に学べる大学はないかと考え、調べたところ、たどり着いたのがこの学科でした。
白百合の児童文化学科は、児童文学をサブではなくメインで学べる点がよかったですね。その後、オープンキャンパスを訪れて、授業内容を聞いて、「ここだ!」と確信しました。

丸山 私は幼い頃から絵本が大好きで、『プリキュア』などのアニメも夢中で観ていました。ぬいぐるみもずっと好きで、今でも家にはたくさんあります。振り返ると、私は小さい頃から「好きなものはずっと好きでいる」タイプなんです。
大学選びに関しては、もともとは文芸作品を制作できる文学系統の学部・学科を探していました。一方で、もともと興味のあった子ども分野についても調べ始めたところ、「児童文化」や「児童文学」を専門的に学べる大学があることを知ったんです。そこで、「創作」と「児童文学」というキーワードをかけ合わせて検索していく中で出合ったのが、児童文化学科でした。
丸山 進路を決めるのが遅かったこともあり、高校3年次の8月のオープンキャンパスに参加しました。そのとき受けたのが「人形文化論」の模擬授業でした。テーマは「大人にとってのぬいぐるみ」。子どものものと思われがちなぬいぐるみを、大人の視点から文化として考える授業で、とても印象に残っています。

私はずっとぬいぐるみが大好きでしたが、どこかで「大人になっても好きでいていいのかな」と思う気持ちもありました。でもその授業を受けて、「ぬいぐるみを好きでいること」を肯定してもらえたように感じたのです。
自分の「好き」を学問として深められる学科がある—そう思ったとき、強く惹かれました。それが進学の決め手になりましたね。
関 当初は「将来なりたい職業」から逆算して学部を探そうと考えていました。教育系や心理学系など、いろいろ検討してみたのですが、調べていくうちに「何か違うかもしれない」と感じることが多くて……。
そこで、いったんすべてリセットして、「好きなこと」から探してみようと思ったのです。小さい頃からディズニー映画や『ハリー・ポッター』シリーズなどが大好きでした。物語の世界に触れているときが、私にとって一番自然で、安心できる時間でした。
そこで、児童文学を専門的に学べる大学はないかと調べ始めて、出会ったのが白百合の児童文化学科でした。児童文学や児童文化を中心に据えて学べる環境が整っていて、「これだ」と思えたのです。好きなものを、好きなまま、正面から学べる場所。ここなら迷わず進めると考えました。

関 はい。長野から深夜バスで(笑)。オープンキャンパスで、いろいろな大学の模擬授業を受けてみたのですが、やはり白百合が一番面白かったですね。
そのときの模擬授業は、「おもちゃ論」で、着せ替え人形の歴史について学んだんですね。その時点では、おもちゃを学びの対象にするような視点がなくて、研究対象として深掘りしていく姿勢に面白さを感じましたね。
安藤 先ほど、丸山さんからも挙がったのですが、「人形文化論」は本当におもしろいです。先生が扱う「人形」は、いわゆるぬいぐるみだけではないんです。ヒーローショーの着ぐるみやアイドル、舞台上の2.5次元アイドルまで含めた広義の「人形」を対象にしています。その視点の広さがまず面白くて、毎回とても楽しく受講しています。
特に印象に残っているのが、「アクスタ(アクリルスタンド)」を扱った回です。そこに実体があるわけではないのに、まるでキャラクターが本当に“そこにいる”かのように感じる瞬間がある。先生はそれを「見立ての文化」と説明していて、それが応援上映の文化などにもつながっているという展開がとても興味深かったです。
授業では、アニメ映画『KING OF PRISM』の応援上映バージョンと通常バージョンを続けて鑑賞して、その違いを比較したりもしました。

授業の最終回には、「人形参観日」と呼ばれる特別なイベントがあります。学生それぞれが自分のお気に入りの人形を持参し、その“保護者”として先生のインタビューを受けます。出会いのきっかけや思い出、どれだけ支えられてきたか—そんなエピソードを語り、最後は一緒に写真撮影もします。
私も大好きな“推し”のぬいぐるみを連れていきました。少し緊張しましたが、周りの学生も「わかる」「いいよね」と共感しながら聞いてくれて、とても温かい時間でした。同じジャンルのキャラクターが好きな人同士で自然と会話も生まれて、改めてここは「好き」を安心して語れる場所なんだと感じましたね。
丸山 私は「子どものイメージ」という授業ですね。毎回さまざまな切り口から“子ども”という存在を考えていくのですが、特に印象的だったのは、ディズニーを扱った回です。過去にディズニーをテーマに卒業論文を書いた先輩の研究をもとに、作品やパークの巡り方、世界観の読み解き方を学びました。
私はもともとディズニーが好きでしたが、ただ「楽しい」「夢がある」というだけではなく、空間設計や物語構造、演出の工夫など、学問的な視点から見るとまったく違った景色が広がるんです。好きだった世界が、より立体的に見えてくる感覚がありました。

「ピーター・パン」というキャラクターのイメージを扱った回もよく覚えています。授業では、「大人になれない存在」としてのピーター・パン像、さらに“ピーター・パン症候群”といった概念を学びました。子どもの頃はただ冒険物語として楽しんでいた作品が、実はとても複雑で、少し残酷さも含んだ物語だと知り、衝撃を受けましたね。
児童文化学科の授業を受けていると、これまで親しんできた作品や文化について、「そんな見方があるんだ」「ここがこうつながるんだ」と新しい発見が次々と生まれます。それが面白いところですね。
関 私は2つあって……。1つ目は、「児童文学・フランスB」です。この授業では、「愛」や「友情」といった哲学的な概念について、グループディスカッションを通して「言語化」していきます。授業のテーマとしては、フランスの絵本をきっかけに思考を深めるという……。もともと私は、「答えのない問い」を考えることが大好きで、この授業はまさに“ドンピシャ”でした。

印象的だったのは、「愛し合う存在は人生に不可欠か」というテーマで議論した回です。必要だと考える人もいれば、必ずしもそうではないという意見の人もいる。私は「必要派」の立場で話しましたが、まったく違う立場の意見を聞くことで、自分の考えが揺さぶられたり、より深まったりする感覚がありました。
こうした深いテーマは、普通ならある程度仲のいい友達じゃないと話しにくいものですよね。でも、この授業では、顔見知り程度の先輩や同級生とも自然に意見を交わすことができました。それが心地よかったですね。
もう1つは、「絵本論」です。これは、「戦争」「世界」「社会」など毎回のテーマに合う絵本を学生が持ち寄って、グループ内で紹介します。絵本の話から普段は聞けない同級生の人生哲学などを聞けることもあるし、今後の会話のきっかけにもなるんです。
私は、「戦争」のテーマの回に、有名な『スイミー』の作者であるレオ・レオニが描いた『どうするティリー?』という絵本を持参しました。これは1匹のネズミが高い壁を乗り越える話なのですが、実はベルリンの壁を見立てて描いた作品だといわれています。
子どもの頃、何気なく読んでいた絵本に深いメッセージが込められていたことに気づいたりできるのは、この学科の学びの醍醐味ですね。
安藤 私は、「昔話」をテーマにしたゼミに所属しているのですが、前期はグリム童話などの昔話をみんなで読み、作品の背景や解釈について考察しました。後期の前半では、研究室に所蔵されているさまざまな『赤ずきん』の絵本を1人1冊担当して、文章や挿絵の違いを分析しました。
同じ物語でも、作家や画家によって表現が大きく異なることに驚かされましたね。かわいらしい表現のものもあれば、狼が非常に恐ろしく描かれているものもあり、昔話絵本の奥深さを実感しました。

丸山 想像の何倍も広い分野を学べるのが意外な発見でしたね。特に印象的だったのは、レポートや課題のテーマ設定の自由さです。「おもちゃ論」のレポートでは「自分が好きで、ときめくものについて語ってくれればいい」という課題が出されたり。ここまで縛りがないとは思っていませんでした(笑)。
もう一つ驚いたのは、専門科目の多くが学年混合で開講されていることです。同じ授業に1年生から4年生まで一緒にいることも珍しくありません。他大学の友人に話すと驚かれることが多いですね。学科が少人数であることのメリットの一つだと思います。
また、授業を受ける中で、もともと好きだったことを改めて思い出す瞬間も多くあります。「これがやりたい」と思って入学したはずなのに、学んでいくうちに「あ、これも好きだったな」「こんなことにも興味があったな」と、新しい気づきが次々と生まれています。

安藤 おもちゃや児童文学など、昔からある児童文化だけを勉強できるのかと思えば、実際はゲームやマンガなど現代的なテーマについても勉強できるところがすごく意外でした。自分としては、好きなことについて、とことん学んでレポートを書けるので、本当に楽しいです。
関 別の角度から言うと「学問領域の広さ」も魅力だと思います。児童文化とひと言で言っても、いわゆる絵本やおもちゃだけではない。大人から子どもに与えられる文化だけではなく、子どもたちの間で自然に生まれてきた遊びや伝承も扱いますし、最近で言うとサブカルチャーやオタク文化のようなテーマにも触れます。扱う範囲が本当に広いので、そのときに自分が興味を持っている分野を授業で学べるのが面白いです。
例えば、私はもともとあまりマンガを読んでこなかったのですが、「マンガってどう読むんだろう」と思って「マンガ論」の授業を取ってみました。そうやって新しい世界に触れることもできるし、今好きなものをとことん深掘りすることもできる。どちらもできるのが、児童文化学科の魅力だと思います。
好奇心旺盛なタイプの人にとっては、そのときの「好き」をどんどん追いかけられる環境がここにあると思います。
安藤 児童文化学科の学生は、とにかく「好き」を貫いている人が多いですね。それぞれが自分の関心を真剣に追いかけていて、その姿勢がとても魅力的です。アニメやマンガ、絵本、特定のキャラクターなど、対象は本当にさまざまです。中にはかなりマニアックな分野を偏愛している人もいますが、その熱量に触れると「本当に好きなんだな」とリスペクトの気持ちが生まれます。
また、「昔これが好きだった」といった思い出を共有できることも多く、「好き」を安心して語り合える雰囲気がありますね。
丸山 安藤さんと重なる部分もありますが、児童文化学科の学生は本当に「好き」が深い人が多い。褒め言葉としての“オタク”の人が多いと思います。
あと、入学前は、「白百合」と聞くと少しお嬢様のイメージがありました。でも実際に入ってみると、特に児童文学の授業では服装も雰囲気も本当にさまざまで、多様なタイプの学生が集まっていることに驚きました。
また、みんなの「好き」が深いからこそ、自分が知らない分野でも、友人に聞くと驚くほど詳しく教えてくれます。純粋に好きなものを語る人の話を聞くのはとても楽しく、そこから新しい世界を知ることも多いですね。
そして何より、お互いの「好き」を否定しない空気があります。少しマニアックな趣味や、これまであまり周囲に言えなかった関心も、ここでは自然に話すことができます。先生も含めて、安心して自分の興味を表現できる雰囲気がありますね。
それこそ、私も高校のときは結構“オタク”な熱量は内緒にしていたのですが、今なら別にオープンにしても平気かなと思えます。
丸山 2年次になって、「出版演習」の授業でわりとしっかり先輩との共同作業を経験しましたね。これは、本づくりのプロセスを実践的に学ぶ演習で、グループで企画を考えて、原稿を執筆し、誌面をつくり上げていきます。
ここで、先輩と一緒に話し合いながら制作を進めたのですが、経験の差はあるものの、いわゆる「先輩の壁」のようなものはあまり感じませんでした。むしろ自然に意見を出し合いながら作業ができ、とても取り組みやすい雰囲気でした。先輩が大事な場面で引っ張ってくれたこともあり、心強かったです。

この演習では、学科独自の文芸誌『開花宣言』の制作にも携わります。教員へのインタビューを行ったり、企画ページを担当したりと、学生主体で誌面をつくり上げていきます。取材・執筆だけでなく、ページ構成やレイアウト、校閲といった具体的な工程にも関わるため、出版の現場を体験できる貴重な機会だと感じています。
こうした出版物を実際に「形にする」経験ができることは、入学前にあまり想像していなかった魅力の一つです。学年や立場を越えて1冊の本をつくり上げる経験は、とても充実した学びになっています。
関 私も皆さんと同じになりますが、この学科は「好き」に対してとてもエネルギッシュな人が多いと感じます。自分の関心を自由に追究している人ほど、実は心の許容範囲が広く、他者の興味や価値観も自然に受け止められるのではないかと思います。
全力で好きなことに向き合っているからこそ、「人は人、自分は自分」といった健やかな距離感を大切にしている人が多い印象です。そのため、互いの違いを尊重しながら安心して関われる雰囲気がありますね。

授業だけでなく、課外活動でも先輩方と関わる機会があります。私は安藤さんと一緒に「児童文化学会」に所属して、オープンキャンパスでの学科紹介や文化祭の企画運営などを担当しています。少人数制だからこそ、顔見知りが多く、自然とつながりが生まれる環境があります。
学びの場でも課外活動でも、学年を越えて支え合いながら活動できることは、この学科ならではの魅力だと思いますね。
安藤 私は入学前から絵本の編集者になりたいと思っていて、まさに今から就職活動に臨むところです。先ほど丸山さんが紹介した学科独自の文芸誌『開花宣言』の編集に関わりながら、創作系の授業でも絵本をつくったりして経験を積んでいます。
児童文化学科には「絵本制作研究」という授業があって、自分で絵本を描いて、製本まで経験できます。さらにそれを発表する場もあります。その授業では、現役の絵本作家さんが外部講師として訪れて、ワークショップをやってくれたりもします。本気で絵本作家や絵本の編集者を目指すなら、かなり本格的に夢に向かって突き進める環境があると思います!
丸山 私はずっと将来の夢みたいなものがなかなか定まらなくて、今もまだ模索中です。ただ今、興味を持っていることで言うと、授業をきっかけに、「絵本の研究」に面白さを感じています。絵本好きが集まる勉強会である「絵本研究会」に先生から誘っていただいて、参加してみたらすごく面白いなと……今は絵本の学びを深めていきたいですね。
関 私も今は絵本や児童文学の研究が面白いですね。もともと好きだった『ハリー・ポッター』シリーズ、あとはディズニー映画やアミューズメントパークなどエンタメ系の研究テーマにも興味があります。本に関わる仕事にも関心があるので、司書課程を取ったりもしています。
さらに、絵本の編集者の仕事も面白そうですよね……。在学中にさまざまな経験を積みながら、将来についてじっくりと考えていきたいと思っています。

人間の原点である「子ども」を通して多様な文化の在り方を考える、日本で唯一の学科。
児童文学・児童文化・制作創作の3分野からアプローチでき、絵本、児童文学、アニメ、ゲーム、キャラクター、ぬいぐるみ(人形)など、さまざまなテーマを学べる授業がそろっている。
司書やおもちゃインストラクターの資格を取得可能で、卒業生たちは、出版社、教育関連企業、玩具・コンテンツ制作メーカーなど幅広い分野で活躍している。
白百合女子大学 人間総合学部 児童文化学科
3年 安藤 愛紗さん
2年 丸山 来花さん
2年 関 小春さん