2年連続志願者増と倍率アップはなぜ起きた?!
2025年度に続き、2026年度入試でも大規模校が志願者数を伸ばした。しかし、これは単純な「入試活況」ではない。
大学側の構造的な合格者絞り込み、共通テストの平均点ダウンによる国公立組の流入、安全志向による手厚い出願ーこうした複数の要因が重なり、受験生にとっては例年以上に厳しい戦いとなった。
年内入試も活況だが、その中身を見ると「学力型」導入校が数字を押し上げている実態がある。2026年度入試で何が起きたのか、そして2027年度以降に向けて何を準備すべきか。データをもとに解説する。
河村卓朗(SINRO!編集長)
大学入試には「隔年現象」と呼ばれるセオリーがある。前年に志願者が増えた大学は翌年敬遠され、志願者が減るというものだ。2025年度が私大全体として6年ぶりの志願者増となったことを踏まえれば、2026年度は反動で減少してもおかしくなかった。
ところが結果は逆だった。豊島継男事務所の調査によると、2026年度の私大一般選抜の志願者数は前年度比109.8%。2年連続の志願者増で、集計した530校のうち57.5%にあたる305校が志願者増となった。志願者増の大学が過半数を占めるのは、実に6年ぶりのことだ。
首都圏の状況を見ると、東京地区は109.1%で3年連続の志願者増、南関東地区(埼玉・千葉・神奈川)は106.1%で2年連続の増加となった。また規模別に見ると、収容定員1万人超の大学群が115.7%と突出して高く、大規模校に人気が集まる傾向はさらに強まっている。
2026年度入試が「受験生にとって厳しかった」大きな理由の1つが、大規模校を中心に合格者数を絞り込んだことだ。
その背景には2023年度入試以降、定員管理基準が変更され、段階的に厳格化されてきたことがある。収容定員8000人以上の大規模校には、従来入学定員の1.1倍、収容定員の1.4倍とされていた基準が2023年度からは入学定員管理は撤廃され、収容定員の1.3倍、2024年度は1.2倍とする経過措置がとられた。多くの大規模校がこの措置を活用し、入学者を多めに確保したのだ。
ところが経過措置は2年で終了し、2025年度からは収容定員の1.1倍が基準となった。一方で、経過措置期間に「多めにとった」学生はまだ在学中だ。さらに、新学部を設置する大学は収容定員の105%以内に入学者を抑える必要もある。つまり、いま大規模私大は「入学者をとりたくてもとれない」という構造的な制約の中にいるわけだ。
これを裏付けるように、2026年度入試における東京地区の一般選抜合格者数は前年比92.5%と大幅に減少した。志願者数が増えているのに合格者数が減っているのだから、倍率は当然上がる。下図の東京地区の実質倍率は4.22倍(前年度3.58倍)に達した。倍率アップの要因は受験生側だけにあるのではない。大学側の事情が難化を構造的に引き起こしている面があることを、まず押さえておく必要がある。

つぎに大学規模別の志願状況をみていくと、収容定員1万人超と2万人超の大規模校はほとんどの大学が志願者増となっている。全体の指数を見ても2年連続で大幅増である。5000人超の中規模校も志願者増となっている大学が7割を超えており、人気回復がうかがえる。
数年前まで志願者減が続いていた小規模校(1000人超・999人未満)も、全体指数では増加に転じており、回復の兆しが見える。ただし、この規模では志願者減の大学がなお多く、全体的には回復傾向にあっても全ての大学が恩恵を受けたわけではないことがわかる。

つぎに、大規模難関私大「早慶・MARCH・日東駒専」の一般選抜の志願者状況をまとめた表を見ていきたい。
微減となっているのは早稲田大学、明治大学、中央大学だけで、他の大学は全て志願者増となっている。なかでも東洋大学がこのグループでトップの志願者数を集めていること、日本大学が大幅な志願者増となっていること、専修大学、駒澤大学も志願者数が増えていることを考えると、本命校としても併願先としても出願しやすい日東駒専ゾーンに特に積極的な出願があったことがみえてくる。

こうした大規模難関私大の志願者増の要因について考察していくと、受験生側にも2026年度ならではの特殊事情があった。
その1つが、共通テストの平均点が文系で前年度比約▲24点、理系で約▲30点と大幅にダウンしたことだ。これにより、国公立大学の志願者数は全国で前年度比97.9%と減少(豊島継男事務所調べ)した。共通テストの得点が芳しくなかった国公立志望者の一部が私立大学へと出願先を広げたことが、私大全体の志願者増の一因となったとみられる。
加えて、2025年度入試の難化をうけて安全志向となった受験生が併願校数を増やしたことや、各大学が検定料割引を積極的に拡充したことなども1人あたりの出願数を増加させ、全体の志願者数を大きく押し上げた。
上表の志願者数一覧には登場しないが、入試改革が奏功し2026年度入試で大きく志願者を伸ばした首都圏の私大として、桜美林大学、神奈川大学、芝浦工業大学、東海大学、日本女子大学などが挙げられる。
各校に共通するのは「出願コストを下げる」という考え方だ。同一試験日の複数出願を定額化する、2併願目以降を無料にする、共通テスト利用入試の割引幅を大きくするなど、受験生が複数の学部・学科に挑戦するハードルを引き下げた。
このような入試改革を行うと、1人あたりの出願数が増えるので「延べ志願者数」を増やしやすい。一方で、こうした割引制度を積極的には導入していない難関私大は1人あたりの出願数が少なくなる傾向があるため、大学の志願者数を分析する際には「延べ志願者数」と「実志願者数」という両方の視点からの検証が必要だろう。
こうした状況の中で際立ったのが、3月入試(一般選抜後期・共通テスト利用後期)への志願者急増だ。一般選抜後期の志願者数は全国で前年比128.2%、東京地区に限ると136.8%という驚くべき数字になった。共通テスト利用後期も東京地区で129.2%と大幅増。2年前まで3月入試はほとんど受験生が集まらない「閑散期」だったことを考えると、隔世の感がある。
豊島継男事務所が調査した首都圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)の一般選抜後期試験(共通テスト方式を除く)の志願者数を見ると、2020年度の約11万2千人から2024年度には約5万8千人とほぼ半減していた。「3月はガラガラ」という感覚はここから来ている。
ところが2025年度に5年ぶりの志願者増に転じると、2026年度はさらに加速。東京地区6万2013人、千葉・埼玉・神奈川2万9873人の合計約9万2千人と、2年間で2024年度比およそ58%増という急回復を見せた。
共通テスト利用後期の首都圏志願者数も急増しており、東京地区では2024年度の1万3768人から2025年度に2万819人、2026年度は2万6868人と2年間で約2倍に膨らんでいる。つまり、2月前半に実施される難関校のいわゆる「前期試験」で思うような結果を出せなかった受験生が多かったため、「安全網」だったはずの3月入試への駆け込み需要が急増し、こちらも激戦となってしまっているのだ。

ここからは、年々志願者が増えている年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)についてもみていきたい。豊島継男事務所の調査によると、2026年度入試では総合型と学校推薦型を合わせた全国の志願者数は前年比111.8%。東京地区は111.9%、南関東地区は123.2%と大幅に伸び、こちらも活況を呈したもようだ。
その大きな要因として考えられるのが、中堅総合大学や中小規模校を中心に、総合型選抜の募集人員増、試験回数増、併願制度の導入、入学手続締切日を年明けまで延ばすなど、受験しやすさを意識した取り組みを行う大学が増えていることだ。

さらに近年、新たな選択肢として学力テストを中心とした「基礎学力型」の総合型選抜が加わり、志願者増に拍車をかけた。2026年度は東洋大学、大東文化大学、玉川大学、拓殖大学、神奈川大学、関東学院大学ほか複数の大学が実施した。
年内の学力テストを中心とした入試は、難関私大受験層の格好の併願先として、また一般選抜本番に向けて受験経験を積める場として機能しつつある。
2026年度は、東洋大学の基礎学力テスト型や神奈川大学の適性評価型のように多くの志願者を集める大学があった一方で、志願者数が数百人規模にとどまる大学も散見された。年内学力型入試はまだ発展途上にあり、早めに目を向けた受験生ほど優位に立てるともいえそうだ。
ここまで解説してきた2026年度入試の概況から見えてくるのは、私大入試の「二極化」だ。難関私大の一般選抜には2年連続で志願者が集中し、定員管理基準の制約から合格者数を絞る大学が多く、全体として厳しい入試となった。
3月入試も高倍率化が進んだことで、出願校数を絞り込んでいた受験生ほど厳しい結果に直面した可能性が高い。実際、近年は浪人生の数が緩やかな増加傾向にあるとも指摘されており、より慎重な志望校選択が求められる。
一方で、年内入試では学力型入試が話題となっているものの、中小規模校を中心に従来の書類や面接を中心とした入試の募集人員増や併願を認める入試の実施、試験回数増などの施策を行う大学も増えている。ここに私立大学の学生募集における二極化があるといえるだろう。以上をふまえて、最後にこのような提案をさせていただきたい。
大東亜帝国クラス周辺、あるいは地元の中小規模校を志望する受験生にとっては、総合型選抜の戦略的な活用が現実的な選択肢となりうる。
一般選抜には国公立志望者や上位大学志望者の併願が大量に流れ込む構造があり、その影響は大東亜帝国層まで及びつつある。一方、書類や面接を中心とした総合型選抜で学力上位者がこの層に参入する可能性は低く、志望校への熱意や地道な研究が正当に評価される場となりやすい。
こうした「土俵の違い」を理解したうえで、一般選抜や年内学力型入試への挑戦も視野に入れつつ、総合型・公募推薦対策に早期から取り組むことが、現実的な進路設計につながるだろう。
また、総合型選抜対策としてじっくり志望校研究をすることで入学後のミスマッチを減らす効果も期待できる。
難関・上位校を志望する受験生にとっては、年内の学力型入試を「本命校の押さえ」や「受験経験を積む場」として位置づけることが有効と考えられる。
また、英語外部試験利用方式の志願者占有率は全国で32.9%まで上昇している。特に東京では私大の約70%にあたる77校が導入済で、もはや難関校受験の必須アイテムと化していることも改めてお伝えしておきたい。
加えて、第一志望校への強気な出願集中はリスクが高く、合格可能性を高めるためには早い段階から手厚い出願計画を立てることが重要だ。
2027年度以降も、大規模校への人気集中・合格者の絞り込み・年内入試の学力型拡大という3つの流れは続くと予測される。高校の進路指導においては、こうした構造変化を踏まえたアドバイスがますます重要になってくるだろう。
データ出典:豊島継男事務所「2026年度(令和8年度)一般選抜志願状況レポート」および「集計表 総合型・学校推薦型選抜」