総合型選抜対策が追い付かない!?情報収集をする時間がない!?
年内に大学や専門学校に進学を希望する生徒が多い公立高校の現場は、進路指導に際して多くの悩み事を抱えているようです。
本稿では、高校の進路指導部や学年担当の先生たちと日々、コミュニケーションを取らせていただいている進路企画の営業担当者たちの目から見た公立高校の進路指導の現状と、これまでにお手伝いをさせていただき好評だった企画事例について、座談会形式でリポートします。
(司会・構成 本誌編集長 河村卓朗)
(写真右から)
足立 幸太:進路企画 営業部 東京担当課長
吉澤 那美:進路企画 営業部 千葉・埼玉担当チーフ
酒井 大樹:進路企画 営業部 東京・神奈川担当課長
石川 雅史:進路企画 営業部 埼玉担当係長
足立 コロナ禍や入試改革などを経て、年内入試を希望する生徒が確実に増えています。学校推薦型選抜(指定校制)には面接指導など従来どおりの対応をされているようですが、「総合型選抜を希望する生徒への指導方法がわからない」という声をよく聞くようになりました。
石川 総合型選抜が複雑化しており、難しい課題を出したり、より中身の濃い志望理由書を求めたりする大学もあって文章指導には特に苦慮されている印象があります。学習計画書となると個別の大学の情報を把握しておく必要があり、さらにハードルが上がってしまいます。
吉澤 私は各大学の複雑な入試方式や最新情報の共有が校内でされにくいという話をよく伺います。また、「総合的な学習(探究)の時間」の設計・運用に苦慮されているという声もしばしば耳にします。
酒井 公立高校は定期異動があるので、年度ごとに進路指導のノウハウを蓄積し共有することが難しい環境だと感じま
す。また進路指導部から離れると情報をキャッチしにくくなり、その間に入試制度が大きく変わることもあって、先生個人としても情報を蓄積しにくいといえるかもしれません。
足立 東京都立小川高校では、近隣の複数の大学と連携し、年間で4回、午後の授業時間を使って1年生の大学見学を実施されています。異なる4つの大学を見学し、自主的なオープンキャンパス参加へつなげることはもちろん、「先輩訪問」という位置づけで学生の研究・学生生活を知り、3年後の将来・進路を考える探求的な狙いもあります。
酒井 東京都立松が谷高校では、2年生の前後期の年2回、自分の希望進路に関わる分野の社会的課題について研究発表する機会を設けられています。このような取り組みを事前にやっておくと総合型選抜の面接でも胸を張ってアピールできそうです。
石川 埼玉県立朝霞西高校では、学年の先生方が沖縄修学旅行に絡めた内容の講義を大学のゼミナール形式で実施したそうです。生徒に興味・課題意識を持たせたいという狙いがあったのでしょう。
吉澤 埼玉県立上尾南高校です。3年生の美術の授業の一環で、企業のイメージキャラクターを考えてみようというプロジェクトがあり、進路企画の仕事内容やコンセプト、社員の雰囲気などを生徒さんにお伝えして、それぞれが進路企画にぴったりだと思うキャラクターを考えていただきました。集まったキャラクターは30以上にもなりました。
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石川 探究学習はその学校に合ったものを取り入れていく必要があると思います。稀にですが有償でサポートをさせていただくケースもあります。たとえばグローバルな方向性で探究学習を進めたいと考えていた某高校様からご相談を受けた際には、予備校で英語授業を担当していた弊社社員を中心に、課題の見つけ方から情報収集、プレゼンテーションの方法まで同校オリジナルのパッケージをご提案し、実施しました。
酒井 面接指導の経験が浅い若い先生が多い高校や進路多様校では、弊社の面接ノートをご活用いただいています。特徴は、あまり文章を読んだ経験のない生徒でも無理なく使える仕様にこだわっていることです。2年生の夏から面接ノートを使って文章を書く練習を始め、自己PR文の書き方に関する講演を挟んで文章力を高めていきます。テーマごとに1つ例文が載っているのも使い勝手のよさにつながっていると思います。3年生ではさらなるブラッシュアップを目指して、志望動機の書き方を学ぶ文章講座も受講できます。段階的に無理なく取り組めると先生方からも好評ですね。
吉澤 私の担当校でも2年生の夏ぐらいから面接ノートを使っていただいています。また、専門学校進学希望者の多い高校では学校調べの前のタイミングで学校選びに関する講演を実施し、その中で、弊社厳選の質の高い専門学校を集めたWEBサイトの活用をお勧めしています。
足立 大学進学希望者向けの総合型選抜対策講座へのニーズも高まっており、予備校での指導経験のある社員によるオーダーメイドの講座を有償で実施しています。総合型選抜とは?という基本的なところから入り、志望校調べの後、志望理由書を書いてもらって添削して面談を行うという流れです。個別面談で1人30分、じっくり話せるというのも非常に好評ですね。
石川 総合型選抜対策講座を導入して進学実績が上向いてきた学校もあります。やる気のある生徒には必要に応じて、たとえ有償でもこうした講座を利用して1ランク上の大学を目指してほしいという雰囲気になってきていますね。そのほか、夏休みに開催する弊社独自の英検講座も実施しています。
吉澤 12月から1月にかけて、第一志望に合格できなかった生徒から先生への相談が増えてきます。弊社では年明けでも受けられる総合型選抜のサイトを開設していて、先生方にあらかじめ周知していますが、「今困っている生徒をサポートしたい」とご連絡をいただくこともあります。改めてサイトの掲載ページをご案内したところ、その中の1校を受験して無事に合格できたとのご報告をいただき、有意義に活用いただけたと実感しました。
石川 志望していた観光系大学に合格できなかった生徒がいるという相談を受けて、有名大学の観光学部に編入学の指定校枠を持つ専門学校をご紹介したことがあります。結果的にその専門学校から大学に編入学できて、先生にも生徒にもとても感謝されました。私はその専門学校ともお付き合いがあったので、あまり知られていない貴重な情報をお伝えできました。
足立 看護系で2月に受けられる専門学校については先生から直接お電話をいただくことが多いですね。1月までに合格できなかったとしても、枠は少ないながらまだ受けられる学校はあるので、弊社のサイトを改めてご案内しつつピックアップした学校をご紹介しています。よい学校の見極め方などの相談を受けることも多く、「専門学校のことは進路企画に」と評価をいただいていると感じます。
酒井 私たちは高校だけでなく専門学校とも深いお付き合いがあるので、タイムリーで確かな情報を得られます。社員同士で情報交換会なども開いていて、自分の担当校以外の情報も共有できています。「楽しい」だけでなく、時に厳しくしっかり指導してくれる専門学校をお勧めするよう心がけています。
酒井 高校内進路ガイダンスは、生徒の心に「進路選択に向けて動かなければ」という種火をつける上で意味があると思います。その種火を大火に育てていくには、合間合間でタイムリーな講演を実施しながら継続的に支援していくことが重要です。講演には、進路指導を連続する1本の線と捉えてサポートしていきたいという弊社のポリシーが具現化されているんです。
足立 私は専門学校に関する講演を特に重視しています。専門学校には偏差値という基準がないため、より慎重に比較検討する必要があります。その分野のプロになる覚悟をもって学ぶ場所なので、ポイントを抑えてじっくり比較し、行くべき学校を見極めてほしいと伝えています。
吉澤 私も専門学校選びのポイントに重点をおいてお話ししています。しっかり調べた上で実際に学校に足を運び、自分の目で見て決めることが大切ですね。先生方には、専門学校の職業実践専門課程のページで定員充足率や中退率、国家試験合格状況などを確認することをお勧めしています。弊社発行のSINRO!専門学校特集号では職業実践専門課程のページの見方を解説しているので、そちらもあわせてご案内しています。
石川 大学に関する講演では、大学で何をしたいのかしっかり考えてほしいと伝えています。大学進学の目的を明確にするには、アドミッション・ポリシーやカリキュラムを調べて学部学科の内容を深く理解する必要があり、そのための道筋をわかりやすく示すことを心がけています。大学ともお付き合いがあるので、大学が求める学生像を理解しつつお話しできていると思います。
石川 私たちがお手伝いすることで、先生の時間に少しでも余裕が生まれればと思っています。生徒が頼りにしているのは先生ですから、相談にのってもらえる時間が増えればよりふさわしい進路選択につながると思います。
吉澤 私もお忙しい先生方に時間を有効に使っていただけるよう、できることは精一杯お手伝いしたいと思っています。あと、同じ高校でも年度によって入学者の雰囲気が変わることがあるので、その学年の生徒の様子を先生方に聞いて、より適切なご提案ができるよう心がけています。
酒井 働き方も多様になっている時代だからこそ、生徒が後悔しないよう、たくさんの選択肢を示してあげつつ導くことが大切だという思いで進路指導のお手伝いをさせていただいています。
足立 私は進路指導の一部分に携われることにとてもやりがいを感じています。すべてのご要望にお応えすることは難しいかもしれませんが、信頼してくださる先生方のために力を尽くし、共に生徒の進路実現を目指していきたいと思っています。
併せてこちらの記事では、首都圏公立高校教員468名からご回答をいただきました「生徒の進路選択に関するアンケート結果」をまとめた解説記事を掲載しております。本稿と併せてぜひ、実際の公立高校教員の声をご覧ください。